乳岩

こんなんでいいのよこんなんで

その昔、彦火火出見尊豊玉姫との愛が実り、豊玉姫は鵜戸の岩屋で、産屋の屋根の葺き終わらぬうちに産気づき、ウガヤフキアエズノミコトを産んだその姿(ヤヒロワニ)になっているのを夫神に覗き見られ、恥じ怒って海神の国へ帰ってしまった。その後、豊玉姫は愛児の養育の為に、妹の玉依姫を遣わした。ある日、彦火火出見尊玉依姫と一緒に、鵜戸の宮から狭野の宮にお出かけになった時のこと。丸目山の麓にさしかかった時、抱いていたウガヤフキアエズノミコトが急にお乳をほしがって泣き出してしまいました。玉依姫はお乳を飲ませようとしましたがお乳が出ません。困ったものだと、ふと近くを見ると乳房の形をした岩から、白い雫が落ちていました。それと竹の筒に入れて飲ませるとウガヤフキアエズノミコトはおいしそうに飲みました。この乳岩伝説は、今日まで語り継がれ、乳の神様としてご利益を願うお母さん達が今でも参拝しています。


その丸目山のそば100%使用、完全予約制で知られるそばの名店とおくにあってもそばや 乳岩亭にて中食をしてきました。I団(こちらこちら参照)の第三回活動で、メンバーはI教授、6年生のI女史、3年生のぺこ嬢、TJBY嬢、Non嬢そして私。献立は

  • そば(もり又はかけ)
  • 小鉢
  • 山野草そば衣天ぷら
  • そばめし
  • そばゼリー
  • ざるどうふ
  • 漬物

肝心のお味ですが、


予約するほどのこっちゃない


確かにおいしいのです。その点では文句がない。ただ予約してまで食べるものかというとそうではなかった。ここで考えておかねばならないのは、予約の意味がちょっと違う、ということかもしれません。つまり、都会のお店における予約とは、「人が沢山来ちゃって収拾がつかないから場所取りをする」という意味合いであることが多いのに対し、地方のお店では「食べさせる分だけ作って出したいから何人来るか数える」という目的で予約をとっているという可能性があるわけです。


まあ、それにしても何だな、とやや釈然としない心持ちでそばっ腹をさすっていると、ふとある疑問に思いあたりました。


私がそばに求めているものはなんだろう


実はかなり前*1から、山奥で食べる自家栽培製粉手打ち100%、などというそばにはあまり食指が動かず、そばガイドとかなんとかを片手にわざわざ高速道路に乗って食べにいったりする輩を内心軽蔑したりしてはいたのです。で、その理由は「そこまでするものじゃなかろう」というごく単純なものであると考えていたのですが、いまや自分が田舎暮らし、自家栽培自家製粉手打ち100%のそば屋までクルマで20分もあればついてしまうご身分ですから、そこまでの「わざわざ感」はない。だとすれば、何が原因か、さらにつらつら考えた結果、私は


そば食いにある種の洒脱を求めている


のではないか、という結論に帰着しました。若狭の小鯛は京の雀鮨になると俄然うまさを増すように、いくら自家栽培自家製粉手打ち100%だからといって山奥の農家の土間で食べてもうまくない*2、少なくとも私にとってはうまくない。やはり東京ディズニーランドではピザだのバーガーだのローストビーフだのを食べたいし、海の家ではカレーに氷、ティファニーではキュウリのサンドウィッチを食べたいのが人情というものでしょう。故に東京でそばを食べつけてきた私は、そばを食うことが既に様式化しているというか、そばそのものを摂取するよりもむしろそばという概念を味わうことがそばを食べることとなってしまっているのでありました。


このあたりについてはid:jilin君やid:Sengokuさんのご高見を賜りたいところであります。


しかし一点、好感が持てるところがありました。宮崎なのにそばつゆが甘くない。これは大変重要なファクターです。褒めても褒め切れません。




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*1:ユデスキー氏などの登場以前から

*2:それでこそうまいのだ、とお考えになる方は当然いらっしゃるでしょうしそういう方々の嗜好を否定するつもりはありません、念のため