翻訳
Translations will clearly fall short of originals.(ラスター例文より)
○新訳「星の王子さま」続々 岩波版半世紀、独占権が消滅 (asahi.com)
記事より引用
新訳本は新味を出すのに懸命だ。宝島社版の訳を担当した倉橋由美子さんは「内藤さんの訳はすばらしい。ただ、子どもの読者を意識して訳しておられるので、私は大人のために訳した。だから、これまでのイメージを裏切ってしまうかもしれません」と話す。
倉橋由美子を起用した宝島社もすごいが、倉橋も倉橋で期待通りのコメント。翻訳は原典とは別の芸術になるのが運命であるということをきちんと理解した上で臨んでおられる*1。
そこいくと、村上春樹版『キャッチャー・イン・ザ・ライ』はひどかった。題名からして芸がない。だいたい、最近の翻訳物や洋画は全てそうなのだが、原音主義を採用していますという面を下げておきながら、冠詞 a / the を何の気なしに抜かす傾向があって大変腹立たしい*2。野崎孝版も訳はひどいのだが*3、『ライ麦畑でつかまえて』という題名はすばらしい訳だと思う。
○蓮池薫さん 翻訳家デビュー、新潮社から「孤将」出版へ (Yahoo!News毎日新聞)
北で翻訳員として活動していた蓮池薫氏が、韓国のベストセラー小説に臨む。我々には細かい差はわからないが、例えば北京・上海・台北・香港それぞれの「北京語」がかなり違うニュアンスを帯びる*4ように、北と南の言語共同体も相当違うはず。さらに、日本語もこの20年どんどん進化しているので、翻訳家としては内部言語を相当鍛え上げなければ通用しないであろう。
氏は聡明な方であるようなので、こちらの老婆心にすぎるかもしれないが。
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*2:(例)キャッチャー・イン・ザ・ライはThe Catcher in the Rye アビエイターはThe Aviatorなど:ザ・インタープリターはThe Interpreterだから一見原音に忠実に見えるのだが、「インタープレター」ではなくきちんと「インタープリター」と表記しているのにもかかわらず、やっぱりtheは「ジ」ではなく「ザ」になっていて大変中途半端である
*3:ホールデン・コールフィールドが「オヤジの考えた若者言葉」みたいな口調で喋るのが堪らない