処方

先週の日曜日、学会に出席したときに加島先生に弁証をみてもらい、アドバイスをいただいて処方を変えていたのだが、「部室に炙甘草がありません」ということで、今日になってしまった。市内の皇漢堂(湯本求真の『皇漢医学』にちなんでいるのだろうね)という薬草専門店で炙甘草を求める。500グラム2300円。一回に使うのは2グラム〜3グラムなので、一回分で10円程度。生薬は決して高くはない。いくつもの生薬を組み合わせて処方を作っても、一包(一日分)で150〜300円だから、タバコ一箱分である。


で、部室に戻り(軽ーく書いているが、この時点ですでに学校と市内の間を1往復している=約20km)、指定された通りに生薬を計量し、一包ごとに「生薬パック」(お茶パックのちょっと大きめのもの)に入れていく。処方は「半夏瀉心湯去人参」とでもいうべきもので、詳しくは



黄連 2
黄今 3
半夏 3
厚朴 3
蘇葉 2
乾薑 2
大棗 3
炙甘草2

  • 黄今のゴンは本当は「くさかんむりに今」
  • 単位はグラム


であるが、ホイホイと調剤をしていると、部室に乾薑(干した生姜)がないことがわかったので、また市内に戻る。皇漢堂で「乾薑6グラムください」と言ったら変な顔をされたので(もちろん量り売りはしてくれるのだが、このとき私は「2グラム×3でお願いします」などと言ったので店主は混乱したのだ)、お茶パック、もとい、生薬パックを出して事情を説明したら、笑って2グラムずつ入れてくれた。ただでした。皇漢堂さんありがとう。


自宅に戻って煎じる。黄連の苦ーい香りが台所中に立ちこめる。なるほど、大棗と炙甘草をたくさん入れる理由が何となくわかった。飲んでみてさらに納得。相当苦い。黄連解毒湯ほどではないが、かなり苦い。この前飲んでいた半夏厚朴湯など、これに比べればスルスルとおいしくいただける薬である。でも、この苦みはそれほど嫌ではなく、なんとか飲むことはできる。飲み終わったとたんに尿がたくさん出る。この苦み(および辛み)は、


辛開苦降


の働きを狙っている。私はみぞおちが強く張った感じが頑固に続いているので、まずこれを辛み(主に乾薑)で「開き」、開いたところを苦み(黄連・黄今)で「降ろす」ことでみぞおちのつまりをとる、という目的があるのだ。この病態は、「胃強脾弱モデル」において発現したらしい。食欲はあり、一人前食べるのに、食べると腹が異様にはって苦しい。普通脾が弱ると胃も弱って食欲がなくなるのだが、人間の体は機械ではないので「壊れかけ」とか「半壊れ」の状態が当然考えられ、脾だけ弱って胃はまだ大丈夫、ということが起きるわけだ。



注意:食べたら腹が張って苦しいからといって誰でもが胃強脾弱とは限りませんよ。胃強脾弱だとこうなる、というだけのお話だから、そこのところをお間違いなきように。
漢方に限らず、薬は専門家に相談してから使いましょう。


ともあれ、この薬はあと二包あるから、2番煎じまで飲むとして約一週間。一ヶ月しつこく続いた膨満感は治るかしら?実験です。