御願
(今日の記事は長いので、先に要点だけ書きます)
新政権の事業仕分けで「漢方の保険適応を除外する」との答申が出されました。これに対し、日本東洋医学会・日本臨床漢方医会・NPO健康医療開発機構・医療志民の会が連名で反対署名を集めています。賛同していただける方は是非ご署名ください。
リンク
漢方を健康保険で使えるように署名のお願い
http://kampo.umin.jp/
電子署名フォーム(12月4日締め切り)
http://kampo.umin.jp/contents02.html
それでは、本文をどうぞ。
さる11月11日、行政刷新会議による事業仕分けにおいて、「事業番号2-5:後発医薬品のある先発品などの薬価の見直し」に関する評価コメントが発表され、事実上「漢方の保険適応を除外する」方針が打ち出されました。お医者さんで出される漢方薬は薬局でも手に入るものだから、健康保険で負担するのは無駄だ、飲みたい人は薬局で買って飲めばよい、というわけです。
リンク(pdfが直接開きます)
後発品のある先発品などの薬価の見直し(厚生労働省)
必死で予算を削減するのは結構だと思うのですが、人間必死になるととかく熱くなって過ちを犯しやすい。実は民主党は自らの政策の中で「統合医療の確立並びに促進」という方針を打ち出し、
漢方、健康補助食品やハーブ療法、食餌療法、あんま・マッサージ・指圧、鍼灸、柔道整復、音楽療法といった相補・代替医療について、予防の観点から、統合医療として科学的根拠を確立します。アジアの東玄関という地理的要件を活かし、日本の特色ある医療を推進するため、専門的な医療従事者の養成を図るとともに、調査・研究の機関の設置を検討します。
と明言しているのです。参考:Index2009医療政策<詳細版>
まあ、同じ政策集の中には、医療制度改革なる言葉も散見されますので、ひょっとすると
「漢方を保険適応から外す」
↓
「同時に”医療制度改革”を行う」
↓
「新たに”統合医療”の調査・研究を進め、確立および促進する」
という形で、民主党が「こんな国にした自民党が悪い、俺たちが作り替えてやる」という気概を見せているのではないか、と受け取ることもできますが、だとするとどうも迂遠なやり方です。
漢方薬は健康食品ではなく、中医学というれっきとした医学に基づく薬品ですから、素人が勝手に飲むとあまり効果は出ませんし悪くすると毒になる。この悪くすると毒になるというのは別に漢方薬だけに限ったことではなく、普通に病院でもらうお薬だって、薬局で売っているお薬だって飲み方を間違えれば毒になります。2009年11月13日の薬事日報ニュースによれば、医療用株式会社ツムラの社長が「強く反発」しているとありますが、どうやら自分の会社がつぶれるという理由からだけではないようです。
主力の大建中湯が全国80大学で採用されている現状を挙げ、「患者さんの治療に大きな支障が出る」と訴えた。
全国80大学というのは、医学部のある全ての大学です。大学病院で採用されているということは、大学病院以外の一般の病院・診療所でも多くのところが採用しているということになります。たいていの医者は大学病院で育つので、自分が慣れ親しんだ薬を使う傾向があるからです。2009年2月5日の薬事日報ニュースには、日本漢方生薬製剤協会の実態調査で医師の8割が漢方薬を処方していることが判明した、とあり、
治療での漢方薬の位置づけとしては、「一部の疾患で漢方薬を第一選択」との回答が52・7%と最も多く、特に産婦人科と外科で漢方薬を第一選択薬としている傾向が強かった。しかし、44・5%は「あくまでも西洋薬の補完」としており、全体的には補完的な使い方が多い。
その理由についてみると、「西洋薬で効果がなかった症例で漢方薬が有効」との回答が56・4%と最も多く、次いで「患者の要望」が44・3%との結果で、西洋薬で十分なコントロールが得られない患者が、漢方薬を求めている実態も浮かび上がった。
西洋薬で効かない患者さんがあきらめないですむ手段の一つとして、多くの医師が漢方薬を選択しているという実態が記されています。皆さんの中にも病院や診療所で漢方薬をもらって飲んだことがある方も多いと思います。難しい病気にこそ漢方薬を、というわけで、どうやら医学の知識と経験のない人が薬局でホイと買って飲むものではなさそうです。
しかしながら、我が国の漢方医学はまだまだ発展途上にあり、本来ならば政府が予算を割いて調査・研究し、保護育成して医療の質を高めるとともに、全体の医療費を下げる方向へ持っていくのが筋なのです。そう、ちょうど民主党がマニフェストに記しているように。そのあたりを巡る状況の一端を、ある医師の論考から抄録してみましょう。
- 新薬の高額化による医療費の高騰に対応するため、世界的に代替医療や各種伝統医療の普及発展が叫ばれ、WHOなどの国際機関や各国では政府レベルで真剣に取り組まれている
- 画期的な新薬開発は現在頭打ち
ちょっとややこしい話になってしまいましたが、要するに
- 医療費削減のためには漢方を有効に使う必要がある
- 世界的にはそのつもりで政府機関が研究している
- 日本では全く政府が関心を示さないので、民間がやっている
- このままでは今ある漢方薬の特許を外国に取られ、使うたびに特許料を払うはめになる
- 関心を示さないだけでなく、政府は目先の無駄を省くために漢方薬を医療機関で使わせないようにしようとしている
ということです。木を見て森を見ず、というべきでしょう。ここまで長々と書き連ねて参りましたが、今回の事業仕分け「漢方の保険適応を除外する」との答申に反対していただける方は、どうか以下のリンクから署名をよろしくお願いいたします。周りの方にもお願いしていただけるとありがたいです。
リンク
漢方を健康保険で使えるように署名のお願い
http://kampo.umin.jp/
電子署名フォーム(12月4日締め切り)
http://kampo.umin.jp/contents02.html