追記
直前の記事に追記致しましょう。
<追記>
一つ目の署名と二つ目の署名は対立するものではありません。
【一つ目】
グリベックが効く腫瘍の患者さんはたくさんいて、薬の値段が上がるとその人たちの負担は増えます
【二つ目】
特殊な腫瘍においては、グリベックがだんだん効かなくなってきてしまう人もいるので、新しいお薬スーテントを使えるようにすることも必要です
- スーテントは消化管間質腫瘍(GIST)や進行性腎臓がんに効きます
つまり、
慢性骨髄性白血病やGISTに効くグリベックというお薬があるのですが、その値段が上がってしまうかもしれませんGISTの患者さんにはグリベックを使いますが、それがだんだん効かなくなってくる人もいるので、そういう場合に効くスーテントというお薬を早く日本でも使えるようにしましょう
ということですね。全く矛盾しません。もし、グリベックを駆逐してスーテントだけにしてしまったら、慢性骨髄性白血病の人たちが困りますし、スーテントが使えるようになったら進行性腎臓ガンの人たちも喜ぶのですね。どっちも使えるようにしましょう、ということです。
<追記の補足>
ガンは細胞の異常増殖状態のことです。この異常増殖は遺伝子の変異によって起こることが多いです。私たちがもっている遺伝子は、私たちの体を構成する蛋白質を作るための設計図ですが、設計図がおかしくなっているので、できるものもおかしくなってしまうわけです。
【グリベックの働き】
- 変異した遺伝子によって作られた蛋白質が過剰に「細胞を増殖させろ」という信号をがん細胞内で出し続けているときに、その信号を止めます
- 平たく言えば、ガンの出鼻をくじくわけです
【スーテントの働き】
- がん細胞が増え続けようとする時に必要な複数の生物学的経路を抑制し、成長のための血液と栄養分を奪います
- 平たく言えば、ガンを兵糧攻めにあわせるのです
このようにピンポイントで効く抗がん剤を「分子標的薬」といいます。髪の毛が抜けたり、白血球が減ったりという従来型の抗がん剤によく見られる副作用が極めて少ないとされていますが、新しいお薬なので安全性の確立に時間がかかり、とくに我が国ではその承認が遅れる傾向が強いです*1。